顧みられなかった。そうしていったん宇治の神領に於て、血を見ざる死刑に処せられてしまった身なのである。
それがはからず、この世に呼び戻されて、国を売って東へ下る道中に於てもそうだ、単に自分が縁の下へ寝ていたという理由だけで、群衆のために手込めに遭《あ》わされようとした。幸い、あの時には、遊行上人《ゆぎょうしょうにん》のような眼の開いた人がいて、自分を擁護してくれたけれども、世間の人のすべてが遊行上人ではない。その後、江戸へ来てからも、誤解され通しで今日に至っている。
そこで、捕まったら最後――世間の人には、法と裁きの明断が待っているかも知れない。自分にだけはそれがない。そういうふうに信じ切っているこの男は、こういう場合にでくわすと、死力を尽して脱走する。それを妨げられる場合には、死刑を予想して死闘を試むるのだから是非がない。
ここでは、一旦は相手を前へいなし、それから降りかかる火の子を横へ振払って、相手に一撃を加えて置いて自分は後ろへ脱走を試みたのです。
ところが、この捕手が、意外なる手利《てき》きでありました。十手はケシ飛ばされ、己《おの》れは打挫《うちひし》がれたけれども、そ
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