れはわからない。運搬の途中、過《あやま》って取落したにしては念が入り過ぎている。長浜の土地は山車《だし》の名所だから、それを知っているものは、これも山車の人形の一つで、相当の名工が腕を振《ふる》ったものであろうとの想像はつくけれど、山車の人形というものは、守留《もりどめ》の上に高く掲揚せらるべきもので、土の上へ投げ捨てて置かるべきものではない。まして、高札風情に押し潰《つぶ》されて、起きも上れないような鍾馗様では、鬼に対しても睨《にら》みが利かないのだ。まさに誰かの悪戯《いたずら》だ、悪戯にしても念が入り過ぎている悪戯で、笑いごとの程度では納まらない。だから米友も、
「性質《たち》のよくねえいたずらだ」
ぼうぜんとして、その鍾馗様を睨めたまま、為さん様を知りませんでした。
その時、不意に米友の後ろから風を切って、
「御用!」
「捕《と》った!」
黒旋風《こくせんぷう》のようなものが、後ろの浜屋の天水桶の蔭から捲き起ったと見ると、米友の背後から、さながら鎌鼬《かまいたち》のように飛びついたのです。
「何だ、何をしやがる」
そこで、クルクルと二つのものが巴《ともえ》に廻ったかと見る
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