横暴だといって、恨んで火をつけようとする奴が潜入している」
「え、火放《ひつ》けが来ているのか」
「そうだ、だから、今晩あたり、焼討ちがないとはいわれない」
「焼討ちがかい」
「うむ、火事があるかも知れない。そんなようなわけで、他国の者にはわかるまいが、この長浜の町は、外見の穏かなわりに、内部に殺気が籠《こも》っているというわけだから、うっかり夜なんぞ出歩くのはあぶないというのだ。よって、君は今晩素直にここへ泊るか、そうでなければ、長浜の町へ出ないで、ほかの道を通って胆吹へ帰るなら帰り給え」
青嵐の言ってくれることは穏かで、そうして親切です。だが、どうも米友の頭には、それほどに響かないものがある。
「せっかくだが、そう聞いてみると、いよいよこうしちゃいられねえ、おいらは出かけるよ」
と言って、つと立ち上って、杖槍に手をかけた気勢、とどむべくもなしと見たものですから、
「じゃあ、大事にして行き給え、近いうち拙者は君たちの胆吹王国をたずねてみるよ」
「ああ、いつでも来なよ」
と言い捨てて、米友は早くもこの庫裡《くり》を飛び出してしまいました。
百九十
米友のあわた
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