おとなう声があったらしいのを、二人は炉辺の話の興にのって、それにはトンと気がつかず、「人間の中にもこういう奴がいるよ、こういう奴が……」と言った米友の思い入れを、青嵐は我が意を得たりとばかり受取って(この浪人の名を暫く仮りに青嵐と呼んで置く)、
「うむ、その通りだ、悪い奴がはびこると迷惑をするのは善い奴だ、いったい、悪い奴というものは征伐されるためにこの世に存在しているものなんだが、善い奴は得て事を好みたがらないから、それで隠れたがる、そうなると、悪い奴はいよいよいい気になって、増長|跋扈《ばっこ》する、人間ばかりじゃない、金銭に於てもそうだ、悪貨は良貨を駆逐すといって……」
青嵐居士は、ここまで論じかけたが、これは相手にとって少し理窟っぽいと思い直したと見え、怪魚をビクにしまい込んで、
「明日になったら、早速ひとつ漁師共に話して、こいつの退治にとりかからせることだ。それはそれとして、君に夕飯を御馳走してあげるから、君も働き給え」
こうして、青嵐は手を洗いに行き、米友もそれぞれ夕餉《ゆうげ》の仕度の手伝いにとりかかりましたが、生活ぶりが単純であるだけに、あんまり手数もかからず、釣り
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