頃でもあったろう。歳三だから、歳どんとして丁稚をつとめているうちに、その女中の一人といい仲になってしまった。
歳三は右に言う如く、小柄で、色が白く、それにお洒落《しゃれ》ときているから、女の方が夢中になって、とうとうお腹がせり出してしまった。そこで、もう袖でも隠せなくなって、切れるの切れないの、死ぬの生きるの、やいのやいのという沙汰《さた》になると、さすが後年の新撰組の豪傑も、生ける空とてはなかった。それを口を利いてやっと捌《さば》きをつけてやったのが、男の方では佐藤という土地の幅利《はばきき》、女の方ではここに現われた女興行師のお角さん。その弱味を抑えられているから、さすがの豪傑もいささかテレている。こういうたあいない話をしながら二人は、湖面から来るなごやかな風に面を吹かせて、大津の方面に向って急がせて行く。なお残された新撰組の隊士は、いったん山王下に留っていたが、徐々に叡山《えいざん》へ向ってのぼりはじめました。
百八十一
一方、山王様へ参詣の道すがら、お角は狐につままれたような感じがしている。
新撰組というから、鬼を膾《まなす》で食うような豪傑ばかり集
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