この場へのさばり着いて、そうして、着くと早々、お角さんの方へいやな眼をつかって、キザな笑い方をしながら、またもその鼻っ先へ盆蓙《ぼんござ》を敷いてしまいました。
 またしてもここで、丁半、ちょぼ一、南京《ナンキン》ばくちをはじめて、江戸ッ児のお角をいやがらせようというたくらみに相違ないが、その時、またも店の中がざわめき渡って、
「あ、また、新撰組のお方がおいでになった」
「ナニ、新撰組!」
「真先においでになるのが、あれが、新撰組の副将、土方歳三様でございます」
「ナニ、土方」
「その次のが、今お話の沖田総司殿!」
「ナニ、沖田!」
 新撰組の名を聞いて、一口上げに狼狽周章を極めているのは、例のその三ぴん、よた者、折助、ならず者――お角さんいやがらせ[#「いやがらせ」に傍点]の盆蓙連であります。

         百七十八

 彼等は思いがけなく新撰組の名を聞いて狼狽し、慄《ふる》え上り、ついに面《かお》の色を失って早々に盆蓙をふるい、こそこそと逃げ隠れてしまいました。
 以前からここに控えていた連中は、またグッと引締ったけれども、よた者連のように逃げ隠れはしませんでした。
 お角さ
前へ 次へ
全551ページ中488ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング