、御城主でも、お奉行でも、どもなりませんさかい。当分、手をつけることならんと、新撰組の衆が、そのようにおっしゃりなはってな」
「わからないねえ」
 お角さんは、わからない事だと思いました。しかし、ここで番太を相手に争ってみたところで仕方がない、とお角さんも目をつぶって、この傍を通りぬけ、誰か、そこいらで、もう少し話のわかった人間がいたならば、とっつかまえて、なお委細を聞いてみようと思って、あちらに待受けている一行の者に追いつきました。
 お角さんのあとをつけて来た、いやがらせの安博奕打連《やすばくちうちれん》も、この場の死人の山には全く度胆を失って、一時、お角さんを追求することを打忘れて、慄《ふる》え上った様子です。
 お角さんは、誰ぞ話のわかる人をつかまえて、事の始終を聞いてみようと心がけているうちに、山王様の前へついて、一行と共に一つの茶店に憩いました。

         百七十四

 折よくその茶屋は、土地の年番《ねんばん》の会所になっておりました。つまり右の事件に関連して、土地の顔役が昼夜詰めきりの有様でしたから、事の一切が、わかり過ぎるほどよくわかりました。
 ただ、あれを
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