―」
 そこで、よたとん[#「よたとん」に傍点]は、当然、自分の縄張うちに来たので、頷《うなず》いて胸思案を試みた後、やや反り身になって、
「さよう、今年すなわち慶応の三年は皇紀二千五百二十年じゃによって、今より千年の昔は――さよう――延喜《えんぎ》天暦《てんりゃく》の頃になり申すかな」
「ははあ」
と金茶金十郎が感心して、
「して、それに八年を足し申すと……」
 取ってもつかぬ愚問を提出した時に、お角親方の大一座が、松の根方で、ひときわ陽気に囃《はや》し立て、うたい立てました――
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志賀、からさきの
一つ松
まつは憂《う》いもの、つらいもの
憂いもつらいも
ここはなぎさの
一つ松
ヨイトコ、サッサノ
[#ここで字下げ終わり]

         百七十

 お角親方一座の興が、全く酣《たけな》わなる時分に、湖水の一方から、矢のようにこの岸へ漕ぎ寄せて来た二はいの舟がありました。
 ひたひたと漕ぎつけて来て、桟橋《さんばし》の際へ素気なく乗りつけると共に、乗組の者が、バラバラと岸へ飛び移ったことの体《てい》が尋常ではありません。
 その、岸へ飛びついて来た人体《に
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