て》と、船頭というものの職業とその存在とを、無視してかかった御法破りに類しているから、その反逆者を反省さすべく、船頭殿がその職権の上から、声をからして呼び戻しているに相違ないのですが、川原の中の短気者は、今さらそれに取合うくらいなら、最初から、こういう行動には出なかったでしょう。そこで、一旦は踏み留まって振返って見たけれども、忽《たちま》ちクルリと背を向けて、北上川の川破りの続演をつづけました。
そこで当然、警告を無視された向う岸の船頭が、怒号と共に地団駄《じだんだ》を踏み出したのは無理もないが、同時に、こちら側の岸に立っている船頭共も黙ってはいないのが当然であります。
「やれそれと、のぶとい奴じゃ、渡場《わたし》をかち渡りするは御法度《ごはっと》なんでア、何たるワザワグこったべえ、只じゃ済まねえべ、お関所破りと同罪なんでア、早うでんぐり返《けえ》りな、素直にでんぐり返《けえ》って舟へ乗って渡って来てかんせ! 無茶あしねえものだべなア」
そこで、この川原の中の裸男は、両岸から船頭の怒号の機関銃を浴びせかけられたような立場になりましたが、いっこう立ちすくみもしないで、予定の行動をとっ
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