か、こうしたとかがら[#「がら」に傍点]にないことを言い出すのが変だと思えば思われないことはないのですけれども、それとても、必ずしも米友の独創というわけではなく、
[#ここから2字下げ]
源ちゃんと言っても
返事がない
お嫁さんでも
取ったのかい――
[#ここで字下げ終わり]
という俗言が、ある地方には存在している。それを米友が思い出したから、ガラになくこの際応用を試みただけのものなんでしょう――そう種が知れてみれば、いよいよ以て笑うべきことでもなんでもないのですが、少ししつこいが、これをお雪ちゃんが最初いった言葉尻と比べてみると、少しばかり「てにをは」の相違があるのでした。つまり米友は室内の調度がこんなにすべて新しいのは、「お嫁さんでも取ったようだ……」という単純明白な譬喩《ひゆ》の一シラブルになるのですが、お雪ちゃんのは、「お嫁さんにでも……」で、あとは消滅してしまったのですから、極めて曖昧《あいまい》なものなのです。なお、うるさいようですが、文法上もう少し立入って見れば、「お嫁さんでも」というのと「お嫁さんにでも」というのでは、主格に根本的の異動が生じて来るわけあいのものなのです
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