けどうし》かなにかの生れかわりじゃないか知ら。ですから、あなたがおいやでも、わたしが好きの嫌いのなんのという心持でないにしても、二人は、行くところまで行かなけりゃ納まらないように出来ているのかも知れませんのねえ、行きましょうよ。お蘭さんとがんりき[#「がんりき」に傍点]の奴は、いい気で美濃路へ出てしまいましたし、お雪ちゃんという方は、お化けのようなお坊さんと、これも表の方へ出て行ったというじゃありませんか。あんな人たちへの意地としてもわたしたちは、同じ道をとりますまい――白山へ行きましょうよ、加賀の白山へ――白山はいいところですってね、あなたも、いい御縁ですから、ぜひ一度、参詣していらっしゃい。ですけれども、今度は途中で振捨てて、あの仏頂寺なんて仏頂面のさむらいにさらわせてしまってはいやよ――ねえ、あなた行きましょうよ、北国筋へ。旅は嬉しいものじゃなくって?」
 女は引きつづき兵馬の膝をグリグリと突きました。

         九

 それから、三日市から二本木の間の小鳥峠というところの振分けで、ホッと一息ついた二人の旅人を見たのは青天白日の真昼時のことでありました。
「この辺で、ゆ
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