尋常にお暇乞いをして北国の方へ出かけたということだから、夜逃げというわけでもあるまいが、あんな田舎芸妓《いなかげいしゃ》に出しぬかれたのはがんりき[#「がんりき」に傍点]生涯の不覚と、苦笑いがとまらないが、しかし、こんなけんのん[#「けんのん」に傍点]な場所がらに、寸時も足を留めていることはできないから、すぐその足で、がんりき[#「がんりき」に傍点]はまた飛んで帰りました。
 帰りの途中、がんりき[#「がんりき」に傍点]は、思い出しては、自分ながら腹も立たないほどばかばかしくって、お話にもなんにもならないと、やけ半分でむやみに歩いたが、それはそれでやむを得ないとして、さあ、三日目と約束したあのじだらくお蘭に、何と言って面《かお》を合わせたものか。
 どうも仕方がねえ、お代りを工面《くめん》して行って、それでどうやら御機嫌を取結んで、こっちの男を立てるまでだ。お代りといったところで、ちょっと大枚の三百両だ、そこいらにそうザラにはころがっていねえ、これはこそこそや巾着切りじゃあ間に合わねえ、相当の荒仕事をしなければならねえが、さてどうしたものだろう。
 がんりき[#「がんりき」に傍点
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