、びた助、その辺が柄相当だ」
「びた助でげすか。びた公、一杯飲め――なんて、あんまり有難くございませんな、いったいびた[#「びた」に傍点]てえのは、どういう字を書くんでげすかね」
「金偏《かねへん》に悪という字を書くんだ」
「金偏に悪という字でげすか、ようござんせんな、びた銭一文なんて、全く有難くござんせんな、金偏に悪と書いて、びたと読ませるんでげすか、三馬《さんば》のこしらえた『小野の馬鹿むら嘘字《うそじ》づくし』というのを見ますると、金偏に母と書いてへそくり[#「へそくり」に傍点]と読ましてございますな、金偏に良という字なんぞを一つ奢《おご》っていただくわけには参りますまいか」
「金偏に良なんていう字は無い、びた助にして置け、びた助、その辺が相当だ。これびた[#「びた」に傍点]公、何か珍しいものを御馳走しろ、どのみち、毛唐《けとう》の食うものだから、人間並みのものを食わせろとは言わねえ、悪食《あくじき》を持って来て、うんと食わせろ」
と神尾は、これから持運ばれようとする食物の催促を試みると、金助改め鐚助が、心得顔に、
「殿様、とりあえず牛《ぎゅう》を召上れ、まず当節は牛に限りますな
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