た。
 ああこれは桂の花――と、お銀様の心がいよいよときめいて、その木の下に近づいて行くと、その幹の下に、木ぶり、花ぶりにふさわしいところの人が一人|彳《たたず》んでいました。
「ああ、新月、何とよい月ではありませんか」
 花の木の下に彳《たたず》んでいた、木ぶりにふさわしい人が、先方からお銀様に呼びかけたのであります。
「よい月でございますね」
とお銀様が受けこたえつつ、その人を見ますと、木ぶりには、しっくり合っているけれども、服装は全く見慣れない人でした。最初は奈良朝のそれと思って見ましたけれども、冠もちがえば、色彩の感じもちがう、これは支那の唐代の服装だと見てとってしまいました。それはまさしく、支那の唐代の風流貴公子といった、仇英《きゅうえい》の絵なんぞによくある瀟洒《しょうしゃ》たる美少年なのでありましたが、
「あなたは、この新月がお好きだそうでございますね、さきほど『長安古意』の、繊々《せんせん》たる初月、鴉黄《あおう》に上る……を口ずさんでおいでのを承りましたよ」
「そうでしたか、よくまあ」
 お銀様は、この唐代の美少年の面《かお》を見直そうとしました。同時に、今宵はまたよ
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