した。
 ここまで来ると、若い番頭も全く度胸が据わって、主人の死骸は、あたりへ穴を掘って、手際よく埋めてしまい、証拠に残りそうなものも、ゆっくりと整理して、かえってはればれしい気持で、あのたっぷりしたお内儀《かみ》さんの面影だけを頭にうつらせて、胸を躍らせながら、甲州路に向いたのです。
 そうして、途中で程《てい》よく主人の位牌をこしらえて、主家へ戻って参りました。
「お内儀さん、まことに残念なことを致しました、悲しいことでございます、旦那様は、ふとした病が嵩《こう》じて旅でお亡くなりになりました、私がついておりながらも、こればっかりはどうすることもできませんでございました、どんな用心を致しましても病にだけは勝てないのでございます。でも、せめての心やりは、わたくしが御最期《ごさいご》の時まで附ききりで、できるだけの御看病を致しましたことだけでございます。全く、わたくしはお内儀さんになり代っての分までも、旦那様の御看病に尽しましたが、寿命と申すものは、人の真心《まごころ》だけでは、どうにもならないものでございました。お寺様に頼んで回向供養《えこうくよう》を怠りなくつとめ、この通りお位牌を
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