になるのでございます」
「ああ、知らなんだ、知らなんだ、そういうことでここで殺されるとは夢にも知らなんだ、ああ、ここで死にたくはない、盗人追剥に殺されようとも、貴様の手にはかかりたくない、だが、どうも仕方がない、この敵《かたき》、この恨み、この仇《あだ》――人はいないか、誰か通りかかりの衆でもないか、ああ、誰も人はいない、人がいなければ鳥でもいい、獣でも、虫でも、いいが……あいにく、この雨、蟻《あり》んどう一ついない、ああ、ここで死にたくはない、こいつにだけは殺されたくない――誰か、何か……」
と頻《しき》りに苦しみもがいたけれども、今いう通り頼むべき人はもとより、生ける物とては蟻一つ見えはしない。ただ断末魔の眼に入るものは、今もしきりに降っている豪雨が、小屋の庇《ひさし》から滝のように流れ落ちて、それが水溜りに無数の泡を立てて、芋《いも》を揉むように動揺しているだけのものです。
「泡《あぶく》、泡、泡……泡《あわ》んぶく、おお泡んぶく、敵《かたき》を取ってくりょう、泡んぶく、お前敵を取ってくりょう、敵を取ってくりょう」
と叫びながら、とうとう番頭の手にかかって無惨の死を遂げてしまいま
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