と、もう「お嬢様」に変化してしまっている。しかし、もう、のっぴきならないからお銀様が、
「わたしです、そういうお前は誰ですか」
 こう言って返事をすると、穴から噴《ふ》き出しでもしたように、若いやさ形の男が現われて、いきなり前の兵作がしたように、頬かむりをとって、その面《かお》を突き出して莞爾《にっこり》と笑ったところを見ると、
「あら、お前は幸内《こうない》じゃないの」
 この時はお銀様が狼狽《ろうばい》して、驚愕の声を上げました。
 本来ならば、たとえ頬かむりを取ってみたところで、この宵闇では、知った面であろうとも、なかろうとも、急にそれとは気のつくはずはないのですが、打てば響くようにお銀様が、はっきりと音《ね》を上げました。
「お嬢様、お久しぶりでございました」
「まあ、幸内――」
「お嬢様、ほんとにお久しぶりでございましたねえ」
「お前、どうして、こんなところに、何をしているの」
「はい、さきほど、兵作さんからお聞きの通りでございまして、誰もかまい手がないものでございますから、つい、おてつだいをして上げる気になりました」
「お前のその痩腕《やせうで》で、そんなことにまで頼まれな
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