えすれば必ず穴にはなるのですけれども、ここの場合に於ては特にそれが違う。ここで穴を掘るのは、掘るその約束がある。つまりここで穴を掘ることは、人間の生命を埋むべきために掘るので、人間の生命を埋むるために大地を破壊することが公然と許されるのは、単にこういう地点だけに限ったものなのです。
 しかし、普通ならばこの際、お銀様も、わざわざ特にそういう人が不吉な作業をしている特種地の一角まで足を枉《ま》げて見ることはしなかったでしょうが、どうも、分けて行くこの細道が、その「穴掘り」作業の傍らを通らないことには、これを突切ることは不可能の道筋になっていましたから、そこで、やむなく右の「穴掘り」人足の鍬を持っている方へと近づいて、ついその眼と鼻の先まで来ると、先方が早くも鍬を休めて、そうして頬かむりをとって、恭《うやうや》しく、そちらから挨拶をしたものです――
「これは奥様――おいでなさいまし」
 はて、この男はよそ目もふらず鍬を使っているとばかり信じていたら、いつか早や、自分のここへ来たことを知っていた。いつのまに、どうして気がついたろうと、お銀様が不思議がって、その頬かむりを取った面《かお》を見る
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