くれると言って待構えているところへ産みつけられたのがこの道庵だ。母親が、つまりおっかアが、この野郎と言って自分の胎内から出たところを自分の手でとっつかまえて、もろにひね[#「ひね」に傍点]り殺そうとしたんだが、そこは、道庵を子に持つくらいの母親のことだから、やっぱり、今いった鬼心仏手というやつで、心ではこの餓鬼をおっぴねく[#「おっぴねく」に傍点]ってくれようと待構えていたんだが、手が言うことを聞かねえで、とうとう、あったらことに、道庵の一命を助けてこの世に送り出したばっかりに、天下の不祥を引起して、今日この通り人生《ひとい》かしを稼《かせ》がせるようになったのでげす。つまり道庵のおっかアが、このロクでなしを間びきそこねてこの世に送り出したわけなんだが、この間びくというやつに、目口を抑えるやつもあれば、灰を持って来て口の中へ頬ばらせるやつもある、鶏をつぶすように手っ取り早く、首根っ子をおっぴねく[#「おっぴねく」に傍点]ってしまうやつもある。道庵なんぞは、その手っ取り早いやつで、すんでのことにやらかされようとしたのを助かって、今日この通りの太平楽という廻り合わせなんだ、何が幸いになるか
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