ら、
「こいつは生かして置いてやりてえ、こいつは生かして置かなけりゃならねえ、なんぞと惚《ほ》れこんだ奴は、今までに一人もお目にかからなかったのさ、生かしてみて、まあ、どうやら我慢ができるという奴は一人や半分はあったね――今いう、お前《めえ》、あの米友公なんぞも、その中の一人に数えていいんだが、おりゃまだ、はなから、こいつを生かして置いて、可愛がってやろうなんていう奴には一人も出くわさねえのさ。脈を見たり、薬を盛ったりしてやる時に、腹ん中じゃ、こう思ってんだね、手前《てめえ》たちゃ、道庵ほどの者にこうして脈を取らせたり、安くねえ薬を調合させたり、お手数をかけて、そうして生きていてもらわなけりゃならねえほどの代物《しろもの》じゃねえんだが、道庵もそれ、商売となってみれば、こうしてやらなけりゃ食って行けねえ、今いう通り、食って行くだけじゃ生き甲斐がねえ、食っての上に生き甲斐をもあらせようとするには、それ、一杯も飲まなくっちゃあやりきれたものでねえ、そこで、商売上やむことを得ずしてお前たちを助けようてんだ、あんまり大面《おおづら》をするなよ、と内心こう思って脈を取ったり、薬を盛ったりしている
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