ちまった方が功徳じゃねえかと、そう思うことが無きにしもあらずなんでげす、正直のところ……」
そうすると、お雪ちゃんが、
「先生、お医者さんが、そんな情けない心になっちゃ困るじゃありませんか。ですけれども先生、口と心とは別なんでしょう」
「なあに、口と心とは別じゃねえんだが、心と手とが別になるんだね――心のうちじゃあ正直のところ、こんな奴は眠らしちまった方が、御当人も助かるし、世の中にも一匹の穀《ごく》つぶしが存在しなくなるという効能になるんだが、どうも、その場に至ってみると手が承知しねえんでね、この手が……」
道庵は、その変にひねくれた長っぽそい手をつき出して、お雪ちゃんに見せました。
「この手が、どうも、ついどうも、未練たっぷりでね、殺そうと思っちゃ、つい生かしちまうんでね。今日まで、ずいぶんよけいな殺生《せっしょう》、じゃねえ、よけいな人を生かしてしまったね。ロクでもねえ奴は殺しちまえば、お前《めえ》、今も言う通り、それだけこの世の穀つぶしが減るわけなんだね。まあ、一人の野郎が、仮りに一日に五合ずつの米を食うとしてからが、月に一斗五升、年にならすと一石八斗、まあざっと四俵半、数
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