生涯の一大事なんだ。お雪ちゃん、お前なんぞは、まだその戦陣に臨んだことはあるめえが――嫁入前にそういうことはねえのがあたりまえなんだが、今時の小娘と小袋とは油断がならねえから、或いはお雪ちゃんに於ても、もう或いは時機に於て、すでに処女を離れているかどうか、そのことはわからねえんだが……」
「先生、いやでございます、そんなことをおっしゃっては」
「は、は、は、どうも淑女の前でそういうことを言うのは、本来ならば礼儀に欠けているんだが、こっちは医者ですからな、職業的、科学的に言うんだから、遠慮なくお聞きなさいよ、処女が母となる将来のためを思って言って聞かせてあげるんだから、はにかまずに聞いてお置きなさいよ――」
 道庵は、冷静に釈明をして置いて、それからまた盃《さかずき》を挙げ、
「お産を安くしようとするには、まずともかく、身体を冷えないようにすることだね。身体の冷える、冷えないにも、それぞれ体質があり、拠《よ》るところもあるのだが、人間の身体はどうしても冷えてはいけねえ、清盛様みたいに火水の病も困るが、人間が冷えてつめたくなると、やがてお陀仏になる。そこで、身体の冷えを救って、よき子を産む
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