す。
かくて、米友と弁信とは、近江の湖畔のこの地点で当面相対して、水入らずの会話をしなければならないように引合わされました。
二人はついに、この巌蔭の日向《ひなた》のよい地点を選んで、そこを会話の道場としましたが、この巨大なる切石であって、同時に巌石と巌石の形を成している石質の由来を弁信が勘で言い当てました。多分これは、太閤秀吉が長浜の城主であった時代の遺物、その秀吉の城郭の一部をなした名残《なご》りの廃墟の一つでありましょう。そうでなければ、この辺に斯様《かよう》な大岩石があるはずはないというようなことを、弁信がうわごとのように言いました。
五十二
女興行師のお角親方は、一つには胆吹山入りをした道庵先生を待合わせる間、一つには三井寺参詣と八景遊覧のために、大津へ先着をして参りました。
そうして、三井寺へも参詣をすませ、法界坊の鏡供養も見て、今日は舟を一ぱい買いきって、これから瀬田、石山方面の名所めぐりをしようという出鼻であります。
お角さんのことだから、日頃あんまりケチケチするのは嫌いなんだが、ことに旅へ出てこういう素晴しい名所に出くわした上に、いよい
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