は相手を嫌わないのであります。ですから、一向ひるむ気色《けしき》もなく、そのまま右の辻から杖をうつそうとすると、
「待て――」
と言って、一人の足軽が棒をもって物蔭から立現われました。
「はい」
「坊主、貴様はどこへ行くのだ」
「はいはい、わたくしは竹生島へ参詣をいたしたいと心得て出てまいったものでございます、最初の出立を申し上げますると、日蓮上人が東夷東条|安房《あわ》の国とおっしゃいました、その安房の国の清澄のお山から出てまいりまして、その後追々と国々を経めぐってようやくこの近江の国の胆吹山の麓まで旅を重ねて参りましたものでございますが、ごらんの通り、旅路のかせぎと致しまして、平家琵琶の真似事を、ホンの少しばかりつとめますもの故に、この近江の国の竹生島は浅からぬ有縁《うえん》の地なのでございます……」
「これこれ、そうのべつにひとりで喋りまくってはいかん――貴様、見るところ目が見えないのだな」
「はい、ごらんの通りでございます、まことに前世の宿業が拙《つたの》うございまして、人間の心の窓が塞がれてしまいました、浅ましい身の上でございます。そもそもわたくしがこのような運命に立至りまし
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