あとのところはもう一切心置きなしと信じていたのでしょう。自分が案内をして傍についていて、どうのこうのと言うよりは、道庵そのものを一かたまり抓《つま》み込んで置きさえすれば、それで病人に対しての万事は足りている。死ぬべきものでも、この人が生かしてくれる。いや、すでに死んでしまった自分をさえ、この先生は生かし返らせてくれているのだ。
そこで米友は、道庵を突き飛ばして置きさえすれば絶対信任を置き得るが故に、全く後顧の憂い無くして外の闇へと身を躍らして飛び出し得たものであります。
外の闇というのは、御承知の通り、暁の部分に属するところの胆吹《いぶき》の山麓でありました。
けれども、その闇であることは、前に遊魂のさまよい出でた時の光景と同じことでありましたが、黒漆《こくしつ》の崑崙夜裡《こんろんやり》に走るということの如く、宇治山田の米友が外へ飛び出すと、外の闇が早くもこの小男を呑んで、行方のほどは全くわからなくなりました。
あいにくにもこの際、この男に向っては、セント・エルモス・ファイアーというようなものも飛びつかず、ファイアーの方でも、うっかり飛びつかない方が無事だと思ったものでしょ
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