米友の不在中に沸騰をはじめ、それが下の炉炭中へたぎり落ちて灰神楽《はいかぐら》を始めたのですから、このことは人の生命に及ぼすほどのことではなかったのですが、やはり打捨てては置けない。それ故に、米友がまた忙がしく取って返し、
「ちぇッ! あっちもこっちも世話が焼ききれねえ」
米友が、その灰神楽を鎮静せしめた途端に、目に触れたのは、ついそこに太平楽で大いびきをかいている道庵先生の寝像《ねぞう》でありました。道庵の寝像を見ることは今にはじまったことではないが、この場合、これを見ると、米友がまたグッと一種の癇癪《かんしゃく》にさわらざるを得ません。
人がこうしてまあ一生懸命に――全く生きるか死ぬかで奔走している一方には、灰神楽がチンプンカンプンをはじめるという非常時に、この後生楽《ごしょうらく》は何たることだ、酔興でこしらえた創《きず》だらけの面《かお》に、大口をあいていい心持で寝こんでいる。人間、どうしたらこうも呑気に、じだらくに生きられるものか、おいらなんぞはそれからそれと夜も眠れねえで、身体が二つあっても、三つあっても、足りねえ世の中に、この先生ときては、この後生楽だ。
「畜生! ど
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