くしたちから申しますと、天下第一等の苦労人と申すほかはござりませぬ。幸運を羨《うらや》む人は多くございますが、苦労のことはあんまり認めてやるものがございません」
「なるほど――」
「あなた様も御承知でございましょう、やはり尾張の出身ではございますが、身分は藤吉郎などとは比べものにならない家柄、今は安土《あづち》の主織田信長でございます――織田殿を主人に見立てたばっかりに、藤吉郎も今は江州長浜で五万貫の身上になりました」
「そうすると、そなたのそのお子さんも、やがて一国一城のあるじになり兼ねぬ運命を持っておいでだ」
「はい、親類から一人エライのが出ておりますと、何かにつけて仕合せでございます」
「その通り。もしまた間違って親類から一人悪い奴でも出ようものなら、一家一まきが災難だ」
「さようでございます。それ故どうかこの子もすんなりと立身出世を致させたいものでございます、草葉の蔭におりまするこの子の父親弾正に対しまして、わたくしのつとめでござります――承れば、あなた様のお父上も弾正様とお名乗りあそばされましたそうで、やはり御成人あそばした後までも、あなた様の立身出世をお祈りになっていらっし
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