、長浜におりまして、わたくしの従妹《いとこ》の連合いになっておりますので」
「木下藤吉郎」
聞いたような名だ! と、黒い姿が思わず小首を傾けました。
「はい、その従妹の連合いが、今たいそう出世を致しまして、江州の長浜で五万貫の領分を持つようになりました」
「冗談《じょうだん》じゃない」
と、黒い姿もさすがに桁《けた》の違った母の人の言い分に驚かされ、呆《あき》れさせられたように投げ出して言うと、賢母は、
「いいえ、冗談ではございません、昨晩からの陣触れも、あの篝《かが》りも、みんなそのわたしのいとこ[#「いとこ」に傍点]の連合いがさせている業なのでござります」
「途方も無い。だが、もう一ぺん、その人の名を言ってみて下さい」
「木下藤吉郎と申します」
「は、は、は、何を言われる、木下藤吉郎、それは太閤秀吉の前名ではござらぬか」
「別に、こちらの方では、太閤と申しましたか、秀吉と申しましたか、そのことはわたくしたちはよく存じませぬが、わたくしの従妹の連合い木下藤吉郎がたいそう出世を致しまして、只今、あの江州長浜で五万貫の領分をいただいているのは確かなのでござります、そこへ、わたくしはこの
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