るのでありまする」
「ははあ。それはそうと、拙者もその長浜まで参りたいと存ずるのだが、道がちと不案内でしてな、御一緒に願われまいか」
 黒い姿は存外静かに、物やさしい頼みぶりでしたけれども、それだけにどこか、つめたいところがあり、いっそう無気味なる物言いと受取れないではないが、提灯《ちょうちん》の賢母はいっこう物に疑いを置くことを知らぬ人と見えて、
「それはそれは、長浜はあの通りつい眼の下に見えておりまするが、ここからはまた、道順というものもござりまして、それは私共がようく心得ておりまする故、失礼ながら御案内をいたしましょう」
「では頼みましょうか」
 そこで、提灯がまた動き出すと、黒い姿もむくむくと動いて来て、母と子との間に割り込むというよりは、二人が中を開いて、この人を迎えるような態度をとり、そこで提灯の母が先に、十二三になる凜々《りり》しい男の子が殿《しんがり》という隊形になりました。
 しかしまた、これでは送り狼を中に取囲んで歩き出したようなもので、一つあやまてば、二つとも一口に食われてしまいはしないか。事実上、そういう隊形になっていながら、気のいい母と子は、一向、懸念も頓着も
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