後ろは日本海を背にしている。その遠近に大野があり、大湖があり、中国から内海へかけて山らしい山は無い。こういう山には、天界と、空界と、地上との現象が錯綜して起って、そうして一種幻妙不可思議な怪現象を捲き起そうということは、実に怪に似て怪ではないのです。たとえば、氷点下の山を襲って来る霧が、立っている物体にそのまま凍りついて、風の吹く反対の方へ重なり積って行き、思い設けぬヌーボー式の構造を見せると共に、普通、針金の太さを三尺にまでもして見せる霧氷というものがある。また太平洋から来る南風と、日本海から来る北風とが頂上で入り乱れて、気温が逆転し、頂上の方が非常に暖かくて、麓の方が著しく寒かったりすることもある。
 ことに、セント・エルモス・ファイアーというのは、日本に於ては、この胆吹山で発見されたのが最初だということだ。大海を航海中の船のマストの上に於てしばしば起ることのように、気象の関係で、物の尖端《せんたん》に電気を起し、青い焔が燃えさかる。しかし、この電気は、少しも人身に危害を与えることがない。
 といったような現象を考え合わせてみると、只今の怪現象も、必ずしも生身《しょうじん》の変態不
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