この先生こそは、自分に比して偉人であるのみならず、自分にとっては大恩人であるということの記憶が、この際あざやかに甦《よみがえ》りました。いったい自分というものは、伊勢の国の尾上山《おべやま》の頂から、血を見ざる死刑によって、この世界から絶縁された身の上なのである。
 一旦は全くこの人間社会から絶縁された身が、再びこの人間社会、俗に娑婆《しゃば》と呼び習わされているところの地上へ呼び戻されたのは、船大工の与兵衛さんのお情けもあるが、与兵衛さんは死骸としておいらを引取ってくれただけのものなんだが、その途中にこの先生が転がっていて、そのために計らずも自分はこの世界へ呼び生かされて来たのだ。与兵衛さんが身体《からだ》だけを持って来てくれ、この先生が再びそれに生命を吹き込んでくれたのだ。
 あの途中、この先生がいなければ、死骸としてのおいらを与兵衛さんが、そっと持って来て、それとなくドコかのお寺の墓場の隅っこへでも穴を掘って、おいらのこのちっぽけな身体を納めてしまい、そこでおいらはもう疾《と》うに土になってしまっているのだ。だから、あれからこっち――今日までの生命というものは、全くこの先生の
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