だなあ」
と、その寝顔を見た時に、米友が改めて呆《あき》れ返るような表情をしました。
顔面部には、前にいう通りに相当の負傷をさせられていながらも、その寝顔というのは、相も変らず人を食ったものだと思わずにはいられません。
いかに疲労したにしても、この際、こうして平気で熟睡をとるのみならず、ムニャ、ムニャ、ムニャというような譫言《うわごと》を発するの余裕ある先生を、米友は呆れ返りもし、また、それとなく敬服もしているようなあんばいでした。
しかしまた米友は、自分がこの先生みたような偉人になれない如く、この先生もまた自分のような小人になれないのだ――ということをも合せ考えさせられているようです。特にここに偉人と言ったのは、人格的の内容を持った意味のものではなく、単に先生の体躯《たいく》が、自分に比して長大であるところから、これを偉人と呼び、自分の躯幹が先生に比して遥かに小さいところから見て、小人と名附けたまでのことなのです。
そこで、「ただ長酔を願うて、醒むることを願わざれ」
といったような、かなりの寛容な態度で道庵先生を扱いながら、米友は、その時に、また一つ昔のことを考え出しました。
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