けの時次郎がたまりかねて、
「おい、もうちっと静かにしておくんなせえ」
 隔ての襖をサラリとあけて、たしなめ面をした。その隙間から見ると、いるいる、車座になってばくちの大一座。
 正面切ったのは、色の白い、ちょっとぼうぼう眉のお公卿《くげ》さんと見えるような大姐御《おおあねご》、どてらを引っかけて、立膝で、手札と場札とを見比べている。
 その周囲に居流れた雪の下の粂公《くめこう》、里芋のトン勝、さっさもさの房兄い、といったようなところが、血眼《ちまなこ》になって花を合わせている。
 一方には、別にまた自分の女房らしいのを賭け物に引据えて置いて、しきりに丁半を争う二人組もある。

         四十

 あだしことはさておき、上平館の一室の炉辺に於ては、宇治山田の米友が寂然不動の姿勢をとって、物を思いつつあることは以前の時と変りありません。
 このたびは、何かこんがらかった想像が、それからそれと思案に余るものがあると見えて、夜舟を漕ぐような懈怠《けたい》が無いのみならず、そのもてあます思案がいよいよ重くなると共に、頭も、眼も、相当に冴えてくるのです。ここでとうとう鶏が鳴いてしまいまし
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