なると、この席がしいんとしてきました。
ところが、この座席がしいんとしてくると同時に、襖《ふすま》を隔てた隣りの席がにわかに物騒がしくなりました。にわかに物騒がしくなったのではない、先刻からずいぶん物騒がしかったのですが、こちらがいきり立っているために、なかなか耳へ入らなかったのですが、今、こちらが控え目にして静まったために、隣り座敷の物騒がしさがひときわ冴《さ》えて聞え出したというものです。
聞いていると、キャッキャッと言って引っかいたり、ワッと言って笑ったり、バタバタと物を捨てるような音がしてみたり、銭をバラバラと掻《か》き集めたりするような音がする。こちらがなんで静まり返ったかというようなことは一向おかまいなく、興に乗じてどっと崩れるような笑いが起きたり、また存外真剣になって張合っているような気色にも聞えたり、
「坊主」「青丹《あおたん》」「ぴか一」
「雨、あやめ」「三光」
というような声が洩《も》れて来る。ははあ、賭博《ばくち》をやっているな! 賭博の一種、花合せを――
しかも、こちらのことにおかまいがなく、あまりにのぼせ上って賭博をしているものだから、こちらから下駄っか
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