って、
「いかにも、武州八王子――あれは小田原北条家の名将の城下、江戸よりも開府が古い、なかなか由緒あるところで、新刀の名人|繁慶《はんけい》も、一時あれでたたらを打っていたことがござる」
「なるほど」
 なめ六のとりなしで、座なりが直ってくると、
「八王子は糸繭《いとまゆ》がようござる」
「織物の名所でござったな」
「お十夜《じゅうや》」
まではよかったが、
「八王子在の炭焼はまた格別な風流でござる」
「炭焼?」
「阿呆《あほう》いわずときなはれ、江戸で炭が焼けますかい」
 安直兄いがたしなめると、ダニの丈次が、
「でも、八王子在から出て来た炭焼だが、釜出しのいいのを安くするから買っておくんなせえと門附振売《かどづけふりう》りに来たのを、わっしゃ新宿の通りでよく見受けやしたぜ」
「ではやっぱり、江戸でも炭を焼くんだね」
「炭焼江戸ッ子!」
 こう言って口を辷《すべ》らしたものがあると、急に一座がわいてきて、
「炭焼江戸ッ子!」
「道理で色が黒い!」
 それをきっかけに、新来の大通人の面を見ながら、どっと一時に吹き出してしまいました。

         三十九

 ところが、通人もさ
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