ではない、正面に、安直の一枚上に大たぶさの打裂羽織《ぶっさきばおり》が控えている。これぞ彼等が親分と頼む木口勘兵衛尉源丁馬が、特に三州方面から駈けつけたものと見受けます。
木口が床柱を背負うと、安直がその次に居流れ、そこへまた例の御定連が程よく相並ぶと、やがて次から次、この界隈でも無職渡世と見えるのが馳《は》せ集まって、いずれも膝っ小僧を並べて、長脇差を引きつけ、あんまり睨《にら》みの利かない眼をどんぐりさせながら、精々|凄味《すごみ》を作っている。
土間を見ると大根おろし、掻きおろしが十三樽。
「古川の――」
と安直が、らっきょう頭をゆらりと一つ振り立てると、
「はい、安直|兄《あに》い、何ぞ御用で……」
としゃしゃり出たのが、古川の英次という三下奴《さんしたやっこ》です。そうすると親分の側にいたあだ名をダニの丈次という三下奴が、
「てめえ、なかなか近ごろの働きがいいで、木口親分のお覚えがめでてえ、じゃによってお余りを一皿振舞っておくんなさるから、有難くいたでえて、三べん廻ってそこで食いな」
と言うと、古川の英次が、ペコペコと頭を下げて、
「兄い、有難え、可愛がってやっておくんな
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