ために明戸《あきど》になっていることを心得ていたから、米友が、そっと引開けて、外をのぞいて見たのです。引きあけて見て、外が月の夜であることを知りました。
 月の夜といっても、この巻の初めの名に冒すところの「新月」の夜ではありません。三日月の晩でもなかったのです。当代のある人気作者が、東の空を見ると三日月が上っていたとか、いなかったとか書いたそうだが、新月とか三日月とかいうのは、どう間違っても東の空には現われないものなのです。少なくとも、この日本の国土で見得る地点に於ては……
 ですから、この深夜に、窓を推《お》すと、颯《さっ》と野外に流るる月の色は、新月でも三日月でもないにはきまっている。では、何月の何日の何時何刻の月かとたずねられると、正直な米友が、きっと狼狽《ろうばい》して吃《ども》り出すに相違ない。
 ですから、ここのところは、そう正直な人間を追究しないで置いて、単に、窓を推して見ると、胆吹の山村は一帯に水の如き月色が流れている、ということで不詳していただきましょう。
 もとより、連子形の飛び飛びの空間から、視野をほしいままにするわけにはゆきませんが、さっと窓を開いて、そうして、
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