はちょっと手強く響きましたので、米友が数えかけた銭を置いて、音のした方を見込みながら、その手は我知らず、炉辺に置いた杖槍の方へのびていると、お雪ちゃんがかえって落着いて、
「米友さん、吃驚《びっくり》しなくてもいいわ、あれは鷲《わし》の子なのよ」
「え? 誰の子なんだって?」
「鷲の子なんですよ、ほら、鷲といって、鳥のうちでいちばん大きくて、いちばん強い鳥、あの鳥の子供がいるんですよ」
「へえ……鷲の子がかい、どうして、どこに」
「わたしが飼っているんですから、心配しなくってもようござんすよ」
「どうして、お前、鷲の子なんぞを飼いだしたんだえ」
「どうしてたって、それにはわけがあるのよ、お銀様が村の人から買ったその鷲の子を、わたしが預って世話をしています、それが今はばたきをしたところなんです」
と言っているうちに、たしかに納戸《なんど》の方にいるその鷲の子なるものが、またも続けざまに二度三度はばたきをしました。
二十二
米友としては、お雪ちゃんの説明で一応|納得《なっとく》したけれども、まだ心残りはあって、鷲の子の存在はそれでいいとしても、今まで静かにしていた鷲
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