にみいりのある商売でありませんでしたから、雨が降ったり、雪が積ったりすることに妨げられる商売でありました。日によって、参詣客の投げ銭のはずむ日もあれば、はずまない時もあるのであります。そこで米友といえどもあぶれ[#「あぶれ」に傍点]て帰ることもないではありませんでした。
米友があぶれるくらいの時は、他の網受けの子供は全くみじめなものでした。彼等は、その日その日に相当のものを持って帰って親方に提供しないことの代りには、或いは折檻《せっかん》となり、或いは締出しとなり、或いは欠食となって反応することを米友が知っていました。そういう場合には、米友は、自分の持っていた収入をほとんど残らず分けてやって、そうして彼等の受くべき折檻と、締出しと、欠食とを、自分が代って満喫せしめられたことも、子供の時分に一度や二度ではなかったのであります。
そういう時に米友は、しみじみと、銭というものの魔力を思い知らせられたことでありました。僅か幾文《いくもん》の銭がありさえすれば、自分たちはこの虐待と飢餓から救われることだ――銭があればいいなあ、と米友は、夜の寒空に軒端の縁に腰かけて尾上山《おべやま》つづきの星
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