ゃん、お前の前だけれども、女というものは、なんのかんのと言うけれど、つまるところは面だけが身上《しんしょう》じゃねえのかなあ――」
「どうして、米友さん、そんなことを聞くの」
「どうしてだって、女というやつはね、面が悪ければ、五体を棒に振って一生を台無しにしてしまわなけりゃならねえのか。面のよし悪《あ》しのほかに、女というものの身上はねえのかなあ。そうかといってまた面がよければいいで……楽あできねえよ」
「ホ、ホ、ホ」
とお雪ちゃんが、少しおかしくなって、
「それは、面の大事なことは、女だって、男だって――人間でなくったって、みんな大事じゃありませんか、あのお嬢様がお小さい時分に、そんなむごたらしいお怪我をなすったから、それならお前さんの言う通り、心も傷つくのはあたりまえじゃありませんか」
「ところがね、あのお嬢さんのは、ただ傷ついたんじゃねえ、傷ついてから、それから僻《ひが》んだんだ、僻んでから、それから、そうさなあ、呪《のろ》いだなあ、呪いになって、憎しみになって、復讐になって……今じゃ、手におえなくなっているというそもそもの起りが、火傷の怪我というのが偶然のあやまちの怪我じゃねえ
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