親炙《しんしゃ》している機会に、見よう見まねに習得した賜物《たまもの》と見なければなりません。
あの馬鹿みたようなデカ者は、先生もやれる上に、お医者さんも出来る!
と村人が再び驚異した時分には、ただこの先生でありお医者である人を、子供たちの専用にさせては置けない結果になりました。
この学校も繁昌するが、このお医者さんをまた流行《はや》らせずには置かない世の中になり行きます。
この間とても与八は、自分の彫刻と、説教と、教育と、医術とに専《もっぱ》らなるのみではありません、主家伊太夫のためにも、絶えず詰め切って蔭日向なく働き、またその最も有力なる相談役を委せられてもいました。
二十七
そのうちに、誰言うとなく、こんどお大尽様へ来たデカ者は、あれは只者ではござらねえ、まさしくあれは木喰五行上人《もくじきごぎょうしょうにん》のお生れかわりに相違ない、五行上人が生れかわって有野村のお大尽の邸へお出ましになった――
と、こういう噂《うわさ》が立ちました。
そうすると、善男善女《ぜんなんぜんにょ》が木喰五行上人の再来のお姿を拝みたいというので、与八のこの新屋へお詣
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