にぎ》やかさが加わってゆくうちに、これが与八が註文したわけでもなく、お松のような指導者が存するわけではないのに、花卉木草《かきもくそう》を植え込んだ次に、手でするさまざまの供え物が集まって来るのが不思議でした。
例えば真白い木綿達磨《もめんだるま》、紙幟《かみのぼり》、かなかんぶつ、高燈籠《たかどうろう》といったようなものを誰が持ち来たすともなく持ち来たして押立てる。
無邪気で、こういうことをしている間に、そこは子供心で、おのずからの競争心といったようなものが出て来るのを認めます。甲の紙幟の評判がよいと、乙がそれに負けない気になって、それよりも優れたものを拵《こしら》えて来る、丙のかなかんぶつが喝采を博した時は、丁は竿の先に結びつけた高燈籠の色紙に自慢を見せて、高々と差しかざして来て押立てる――そうして、自然それが出来ない子供のうちには若干の羨望《せんぼう》もあるし、諦《あきら》めているのもあるし、肩身の狭い思いをしているらしいのもある。子供らの為すことのすべてに干渉しない与八も、そういう空気を見て取っては、知らず識《し》らずのうちに子供たちの無益な競争心が増長しつつ行くのを見ると
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