一枝やるもの
花じゃもの
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 与八は、そのお手玉唄を面白いと思いました。また或る時は、その前の地面をつき固めて光るほどに磨いた上で鞠《まり》をつく、あるものは向き合って掌《て》を打って唄う、ある時はまた羽根をつく、おはじきをする、拳《けん》をうつ、立業《たちわざ》では鬼ごっこをする、やがて竹馬に乗って来るものがある、凧《たこ》を飛ばしはじめる者がある、それが、やがて、与八の仕事場の前に群がり立つようになったのも自然です。
 それから与八の彫刻ぶりに興味を持ち、その周囲に群がり、次第次第になじみが出来てくると、これはお松と共に、武州沢井で教育に着手した当時と同様の空気が、おのずから現われて来ました。
 しかし、与八としては、お松ほどの教養があるわけではないから、進んでこれらの子供をどうしようの計画も起らないで、ただ彼等の為《な》すがままにして、彼等と共に遊ぶ心でいると、子供たちは、次第次第に、土地の自然そのものから和《やわ》らげてゆきます。
 土地の自然そのものが、子供たちによって景気づけられてゆくのと合奏するように、子供たちの群《むれ》が群をよんで、人気の賑《
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