れを見直すと、それは、ボロボロの風呂敷包にくるんであるとはいえ、中で、生きて動く気色がむくむくと見えました。
「お見せなさい」
「この通りでがす」
 彼等は、自慢半分に、風呂敷の結び目を少しはだけて見せると、まだ嘴《くちばし》の黄色くなりかけている一箇の猛禽雛が、幼いながらも猛然として、人を射るの眼を光らして、跳り立とうとしています。
「まあ、どこで捕りました」
「硯石《すずりいし》の崖のてっぺんで見つけたから、仕事を休んでとっつかまえましたが、いやはや、これがために一日つぶしてしまった上、命拾いでござんした。ごらんなさい、この通り二人とも、からだじゅう傷だらけ、高い崖から転がり落ちてすんでのことに生命《いのち》を粉にするところでござんしたよ」
「珍しいものですね」
「鷲の子なんぞは、なかなか捕まえられるもんじゃござんせん、親鳥にでも見つかろうものなら、今度はあの爪で上の方へ……命がけの仕事なんでがすが、でも、親鳥は留守でござんしてなあ」
「そうして、お前さんたち、せっかくつかまえたこの鳥を、これからどうしようというの」
「さあ――」
と二人が、お銀様から尋ねられて、改めて面《かお》を
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