地方に見る、あたりまえの山稼《やまかせ》ぎの二人の農夫で、仕事着を着て、籠を背負ったなり。これはこの地特有の副業、或いは正業としての有名な、胆吹山の薬草取りのこぼれであることは疑うべくもありません。ただ、ちょっと驚かされたのは、かく慌《あわただ》しく、こけつまろびつ走る二人のうちの一人が、何か胸に後生大事にかき抱きながら、ものに追われるもののように走り来る事の体《てい》が、穏かでないと見らるるばかりです。
 いよいよ近づいて見ると、その二人は、額にも手にも、かすり創《きず》だらけで、着物もかなり破れ裂けている。妙な恐怖心と、はにかみをもって、お銀様に摺《す》れ違うところまで来たが、存外、歩調がゆるやかになって、その胸に後生大事に抱いたものに眼をくれながら、何かお銀様の好奇に訴えてもみたいようなしな[#「しな」に傍点]をして、
「いやはや、大変な目に逢っちまいました」
「どうしたのです」
とお銀様も、反問せざるを得ませんでした。
「鷲《わし》の子をとっつかまえましたよ、鷲の子を……」
「鷲の子を……」
 その胸にかい抱いたところのものを提示するように言いましたから、お銀様が篤《とく》とそ
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