申出づるにおいては、その科《とが》をゆるされ、御褒美下さるべし。
一、右類訴いたすものなく、村々騒立候節、村内のものを差押へ、とたうにくははらせず一人もさしいださざる村方これあらば、村役人にても、百姓にても、重にとりしづめ候ものは、御はうび下され、帯刀苗字御免、さしつづきしづめ候ものどもこれあらば、それぞれ御褒美下しおかるべきもの也
  年月日[#地から2字上げ]奉行」
[#ここで字下げ終わり]
 米友は、お君に言わせると学者ですから、苦もなくこれを読んでしまって、
「ははあ、一味ととうしちゃいけねえってえんだな、申合せをして村方を立退くのもよくねえてえんだな、それを訴人しろてえんだなあ、訴人した奴には銀百枚を御褒美として下しおかれようてえんだな、なお、その上に、次第によっちゃ苗字帯刀も御免あろうてえんだな」
と言って米友は、高札の表を横目に睨《にら》み、
「一味ととうして乱暴を働くのが悪いのはわかり切ってるが、百姓共だって酔興で一味ととうをするわけじゃあるめえ、何か苦しくって堪らねえことがあるか、そうでなければ、おだてる奴があってそうなるんだろう、それを訴人した奴には御褒美が出るんだ
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