文字摺《もじずり》、しのぶの里
月の輪のわたし
瀬の上
佐藤|荘司《しょうじ》が旧跡
飯坂《いいざか》の湯
桑折《こおり》の駅
伊達の大木戸
鐙摺《あぶみずり》、白石《しろいし》の城
[#ここで字下げ終わり]
笠島の郡《こおり》に入ると、実方《さねかた》中将の遺跡、道祖神の祠をたずねなければ、奥州路の手形が不渡りになる。
かくて、田山白雲は、仙台に入る前に笠島の道祖神の祠へ参詣の道を枉《ま》げてみると、そこで呆《あき》れ返ったものを見せつけられないわけにはゆきませんでした。
二
それは別物ではない、露骨に言ってしまえば、人間の男性の生殖器が一つ、石でこしらえた、しかも、これが図抜けて太く逞《たくま》しいのが、おごそかに一基、笠島道祖神の一隅に鎮座してましますということです。従来とても、路傍や辻々に、怪しげな小さな存在物を見ないではなかったが、これはまた優れて巨大なるものであって、高さ一丈もあろうと覚しいのがおごそかに鎮座しているのですから、一時《いっとき》、初対面の誰人をも圧迫せずにはおかないものです。
「呆れ返ったものだ」
白雲といえども、思わず苦笑をと
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