目に見て、吐き出すように、
「あいつ、また異人館か」
それもその通り、このごろのお絹は、異人館へ入りびたりの体《てい》である。
神尾としては、今となってはもう、かくべつ気にもしないらしい。いちいち気にしていた日には際限がないとあきらめているようでもあるし、異人館なるが故に寝泊りを黙許しているだけの、情実でもあるかのようにも見られる。
洗面も食事も済むと、神尾は書斎へ立てこもりました。
いつもは、ここで、閑居しての唯一の善事としての書道を試むるのですが、今日は、筆を選ぶことはあと廻しにして、まず、机に両肱《りょうひじ》をついて、腮《あご》を両掌《りょうて》で受けて、じっと庭前をながめこんだのであります。
庭の八ツ手の下を小鳥が歩いているのを、暫くぼんやりと見つめていたが、今度は、腮を受けていた両掌を外《はず》して、眼と額をおさえてうつむきました。
「さあ、今日からひとつ、著作にとりかかってやろう」
暫くあって、むっくと頭を上げて、硯《すずり》を引寄せ、紙を重ねて文鎮《ぶんちん》を置き、それから硯箱の中から細筆を選んで手に取り上げたのが、いつもとは少し変っています。
いつもな
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