が加わっていないらしいから、駒井はここへ来て、扉をコツコツと叩いたが、叩いても叩きばえのする金椎でないことに気がつくと、そのまま扉をあけ放しました。
 普通ならば、どちらからか言葉をかけなければならないのですが、ここではそうする必要もなく、開けて見ると室の真中に蝋燭《ろうそく》が一本かすかに光っているその前で、ひとりひれ伏している金椎を見ました。
 駒井が入って来たのに驚きもしないのは、それは、全然気がつかないであちら向きにつっぷしているからであります。といっても、そこで熟睡に落ちているわけでも、居眠りをしているわけでもありませんでした。金椎は卓子《テーブル》を前にして、何かしら厳《おごそ》かな唸《うな》りを立てている。しかし、その唸りは病苦に悩んでの唸りではない。
 その光景を見ると、駒井は何か知らん厳粛沈痛なるものの気分に打たれて、突立ってしまいました。駒井は、金椎がこうして密室の中に、ひとり深い唸りを立てている光景を見たのは、今宵にはじまったことではないのです。駒井がどうかして不意に金椎の室内を訪れた時、こういった光景を見て、最初は病気に苦しんでいるのだと思いましたが、後にはそう
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