ろからバタバタと駈け出した大小二つの人影がある。そのあわてて駈け出したところを見ると、まさしく前に駈け出した大男を追いかけて行くのだということがありありと分ります。
ところが、前に駈けて行く大男は、身体こそ頑丈《がんじょう》そうだが、駈け方は存外不器用で、何か河原の石ころか、杭《くい》かにつまずいて仰向けにひっくりかえった状《ざま》は、見られたものではありません。そうすると、それを幸いに後ろから追いかけて来た大小二つの人間が、いきなりそれを取押えて組伏せにかかりました。そこで、大男がはね起きようとする、二人が必死と抑え込もうとする、三箇が川の岸で組んずほぐれつの大格闘を始め出したのです。
遠眼鏡で委細を見ていた田山[#「田山」は底本では「田代」]白雲は全く呆れてしまいました。いいかげん長い間お客をおっぽり出して、焦《じ》らせて置きながら、ようやく姿を見せたかと思うと、こんどはまたお客の眼の前で、素敵なロケーションをおっぱじめてしまった。船頭は舟を操《あやつ》ればよろしい、船頭がロケーションをして見せることはふざけ過ぎている。また、こちらに待焦《まちこが》れている客人は、ロケーション
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